身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい


 ギイィィーー。


 無人の礼拝堂は、厳かに静まり返っていた。

 しばし時が、止まったかのようだった。

「もう、ブロード様ってば一人でサッサと行っちゃうんですから。馬くらいちゃんと繋いでくださいよね」

 いつの間にか追いついたアボットが、ブツブツと小言を言いながら礼拝堂に顔を覗かせた。

「俺って、割と自由人のブロード様のフォロー、しまくりですよね? この働きを鑑みるに、臨時ボーナスなんて支給されちゃってもいいくらいだと思うんですよ。って、ブロード様聞いてます?」

 恩着せがましく何事か言い募るアボットを尻目に、見回す礼拝堂は、母に手を引かれて訪れた当時のまま、何一つ変わっていない。

 礼拝堂の奥に座する星の女神の礼拝像もまた、当時と同じ、柔らかな笑みでそこにいた。俺は一歩、また一歩と、星の女神の膝元へ進む。

 全長は150センチほど、小柄な少女の等身大の彫像だ。女神は50センチ四方の台座の上で悠然と微笑んでいる。
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