身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 見知らぬ世界に一人放り出された心細さや不安、そういった一切をレーナは胸に仕舞い込んで見せようとしない。
 けれどそれでは、いつか張り詰めた糸が切れてしまうのではないだろうか?

 たまに緩めてやらなければ、苦しいのではないだろうか?

「……さて、どうしたものか」
「ブロードさん?」

 向かいからレーナに声を掛けられて、ビクリと肩が跳ねた。

「いや、なんでもない」

 慌てて取り繕ってみたが、俺は食事中にすっかり空事に耽っていたようだ。

 気を取り直し、食後の紅茶に手を伸ばした。

「ブロードさん、私に何か仕事を紹介してもらう事は出来ませんか?」

 思わず、ティーカップを取り落しそうになった。

 レーナの口から出た「仕事」という言葉に、俺は衝撃を受けていた。

 ランドーラ王国において、貴族階級の女性が働くという発想はまずない。

 そうしてレーナの手入れの行き届いた肌や髪を見れば、レーナもまた労働階級ではあり得ない。
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