鳴かない鳥
鳴かない鳥


なんて男なんだろう、なんて人と付き合っていたのだろう。と、最近私は再びそう思うようになった。

その理由は至って単純なものである。
去年の今頃、私の隣には恋人と呼べる人間が居たからだ。

“恋は盲目”という言葉通り、付き合っていた当時は彼が世界で一番素敵な異性に見え、彼が私の世界の中心だった。

去年のこの時期は、いつもよりも奮発した豪華なデートを計画していた記憶がある。

お洒落なホテルで食事だとか、プチ旅行だとか、ペアリングだとか。


なんて、そんな事をこの時期に思い出したのは、やはり独り身が寂しいからだろうか。

クリスマスイブを直前に控えた今日は、街のどこを歩いても恋人だらけだ。

その中をトボトボと歩く私は、人々から見ればさぞ寂しい人間だろう。

この煌びやかな街の中を歩く人間には似つかわしくない気持ちが芽生える。

幸せそうに笑う恋人、笑い合う家族とすれ違う度に、私の心が灰白に染まっていく気がしてならない。


ちらほらと降り始めた雪のように、積もっても、いつかは融けて消えるものだけれど。
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