独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「そろそろ冬用の靴下を編み始めないといけないけど、毛糸は持ってきてないのよね。いい毛糸売ってるお店、見つけてくれない?」
「その店を見つけたら、僕の靴下も編んでくれる?」

「それはヘンリッカに頼みなさいよ。恋人なんだから」

「ヘンリッカのやつ、靴下はすごく下手なんだ。なぜかヘンリッカの靴下は、つま先がもぞもぞするんだよ」
「そうねえ。お父様のを編んで、お母様のを編んで、あと、私の分を編むの。それが終わってからなら考えてもいいわ」
「それじゃ冬が終わっちゃうよ!」

 パウルスにあげる気などないので、冬が終わってしまってもぜんぜん問題ない。だいたい、ヘンリッカという恋人がいるのだから、彼女に頼めばいいではないか。でなければいっそ自分で編むとか。

「あまり言うと、ヘンリッカに言いつけるわよ!」
「それは……うぅ……つま先のところだけどうにかしてもらおう……」

 テーブルの上にばったりと倒れ込むパウルスがちょっぴり気の毒になってしまった。フィリーネはパウルスの方に、お茶のカップを押しやった。
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