独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 もともと彼の店は仕立屋なのだが、最近、隣に雑貨を売る店が開かれた。仕立屋の店で出た端切れで作られた小物と一緒に、フィリーネが王宮で作っていたような手編みのレースやそれをあしらった小物も売られている。レースの付け襟や、レースのハンカチも人気商品なのだが、レースだけ買って、自分で小物やドレスに縫い付けて飾るのも可愛いと大評判だ。

 三乙女のレースの増産体制はとれないものの、今までユリスタロ湖近くの店でだけ売っていた品が、今ではクラインの雑貨屋でも買えるというわけだ。やはり、彼は商魂たくましいらしい。

 フィリーネのウエディングドレスもクラインが店のお針子総動員で間に合わせてくれた。ベールに使われたのは、虹の乙女イリスのレース。胸元には雪の乙女シエルのレース。そしてスカート部分には、森の乙女ドリーのレースがあしらわれている。

 今、この三種類のレースすべて揃えようと思ったら、どれだけお金がかかるのか考えるのも恐ろしいくらいだ。
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