記憶のかけら
凱旋
怪我をした西宮さんは

しばらく湯治をすることになった。

有馬の湯が、集落の人達の優しさが、

心身を癒してくれるといいな。と思う。



自動車のことはうまく説明できなかった。

自動車は、籠みたいなもので、

これからの移動手段の一つと話せば、

みんな顔を見合わせていたっけ。



鍛冶屋は、

車のラインのことを、

塗師は

白い塗装のことを

桶屋は、

内装の素材を、

久保田さんや鍋島さんたちは、

エサはなにかと聞いてきた。



う~ん。説明できない。



でもみんなの最大の関心は

なぜ動くのか?だった。



難しいよ。説明は。

でも、一生懸命やった。



車を取り囲んで、あっちこっち触って、

ワイパーに驚き後ずさりして、

車に乗ってスピードに興奮して。

しばらくは、おもちゃを手に入れた子どものように、

夢中になりそう。



ガソリンがなくなったり、

バッテリーが上がってしまえば

もう車は走れない。

今回、車があって良かったと思った。



再利用できることがあれば、

どんどん利用して、

お舘さまのみんなの役に立つといい。



港街には、

お舘さまはじめ、

御影さんや側近達と一緒に戻り、

街へ入って行った。

なんかずいぶん昔のようで懐かしい。



わぁー!と歓声があがる。

お舘さま〜!

嬌声が、

あちらこちらから聞こえてきた。

馬に乗ったお舘さまを一目みようと、

たくさんの人が集まっていた。



その声に混じって、

真由美さまご無事で!

真由美さまおかえりなさい!と

声が聞こえはじめた。 



そのうち、

「お舘さま万歳」

「真由美さま万歳」と

声が大きくなっていって

驚く展開になった。



歩いていた真由美に

お舘さまが手を差し伸べ、

馬の背に、お舘さまの前に乗せた。



キャ〜!

悲鳴と

わぁー!

どよめきと

無事を祝う喜びが爆発し、

街は興奮のルツボとなった。



みんなが勝利に酔いしれた。



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