記憶のかけら
灯り
真由美は西宮に付き添っていた。

夜中も熱を下げるため、

額の手拭いを何度も取り替え、

水分を補給して、錠剤を与え、

果物をすりつぶして口に運び、

一生懸命看病をした。



普段薬を飲まない人には、

鎮痛剤は格段の効き目があると、

聞いたことがある。

少しでも効いてくれたらいいけど。



つい、うとうとと、眠ってしまった。

昼間の疲れがでたのかもしれない。



一方、西宮は、

嘘のように痛みが引いて、

驚いていた。急になぜだ?

痛みで、熱で、

のたうち回っていたのに、

軽くなっている。

熱も下がったようだ。



ここ数日、

朦朧としていたのが、

部屋の様子が見て取れる。

今は夜なのか。とても静かだ。



ろうそくの明かりだけが、ゆらゆらと揺れている。



誰か付いてくれているのか?

目を向けて驚いた。



「真由美殿!?」



ずっと優しく語りかけ、

頭を冷やしてくれていた。

夢ではなかったのか?



柱を背にもたれ、

すやすや寝息を立てている真由美に、

心配して山道を来てくださったのか。

胸が熱くなる。



二人で夜の山道を駆け抜け

手を握り、肩を抱き合い支えあい、

有馬に向かった。

思い出して、口元がほころぶ。



有馬での活躍ぶりも、この目で見たかった。

集落の者から軍師として奇抜な作戦を実行されたと聞いた。

驚かされてばかりだ、真由美殿には。

そんな女子の話は、聞いたこともない。



ロウソクの灯りが

艶めかしく

人の気持ちを惑わし始める。



以前、

女子に助けられ

自己嫌悪に落ち込んだ。

それが、

今は、また違う感情が、

どっと押し寄せてきて、

戸惑っていた。



嬉しさと

恥ずかしさと

照れくささと、

そして

自分の中に芽生え始めた気持ちに、

うろたえた。



夢を思い出して。

妙に生々しい感触と

甘い香りと

優しいささやき…



真由美殿が、再び助けてくれた。

ずっとそばにいてくれた。

二人といない強き女子の優しさに、

心が深く震えた。



頭が冴え始めたのと同時に

西宮の生命力が戻りだした。

力強く鼓動が拍動し、

心拍数があがりだした。



真由美から

目をそらせず、そらさず、

ドキドキしながら、見つめていた。



心には温かい思いがこみ上げて、

幸せな気持ちに満たされていく。
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