"鬼"上司と仮想現実の恋
すると、どこからか高い音が響いた。

「これ?
もしかして、ベルーガの声?」

「みたいだね。」

私はまたこの水槽の前から動けない。

悠貴さんにイルカショーを餌に先へと促された。

歩きながら、悠貴さんは苦笑している。

「どうかした?」

「いや。
暁里、どの子供より、水族館を満喫してる
だろ?
くくくっ」

悠貴さんに笑われて、私はちょっとむくれる。

「つまんない顔してるより、いいでしょ?」

「うん。
こんなに楽しんでもらえたら、来た甲斐が
あるよ。
暁里、かわいいなぁ。」

そう言って、悠貴さんは私の頭を撫でた。

「もう!
子供扱いしないでよ。」

私が怒ると、

「してないよ。
暁里がかわいすぎるから、抱きしめたいのを
我慢してるんだ。」

と言って、私の頭にそっと口づけた。
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