"鬼"上司と仮想現実の恋
「お守り。
心だけは、今日1日、お前と一緒にいてやる
から。」

そう言って、田中君は、にっと笑った。

「うわっ、めっちゃキザなんだけど。
それ、田中君に言われてもなぁ。」

と私が笑うと、

「うるせー!
そんな事言うなら、お前1人で頑張ってこい!」

と名刺を取り上げられてしまった。

「いいもん。
私、田中君のより効果ありそうなお守り、
もう持ってるし。」

「お?
見せてみろよ。」

私は、名刺入れから、2枚の名刺を取り出した。

「最強でしょ?」

「それは、最強だな。」

田中君は、そう言って笑った。

私が出したのは、悠貴さんの名刺。

部長の肩書き付きと役職なしの2種類。
初めて同行した日にもらった宝物。

うん。
これがあれば、隣に悠貴さんがいる気分で頑張れそう…
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