"鬼"上司と仮想現実の恋
「失礼ながら、悠貴くんのご両親は離婚
なさってると伺いました。
社長夫人の重責に耐えかねて…という事だと
暁里にそれが務まりますかどうか…」

父が言いにくそうに告げる。

悠貴さんの両親は、顔を見合わせて笑った。

「ふふっ
瀬名さんのご心配はごもっともだと
思いますわ。
ですが、社長夫人といっても、ようやく上場を
果たしたばかりの小さな会社です。
ご心配には及びませんよ。」

悠貴さんのお母さんがにこやかに言った。

「ご心配なさってるようなので、恥を忍んで
申しますと、うちの離婚は、私が広瀬から
逃げ出したかっただけなんですの。」

「え?」

私は驚いて声を上げた。

「広瀬はとても束縛が激しくて、同窓会にも
行かせてくれませんでしたから、ほとほと
困りましてね。
いくら説得しても、男性と同席する所へは
出してもらえなくて、友人とも疎遠になり
始めたのが耐えられなくて、どうしてもと
お願いして離婚してもらったんですよ。
私、籠の中の鳥でいるのは、嫌でしたから。」
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