"鬼"上司と仮想現実の恋
「あっ………
あの、部長なら、大丈夫かなぁ…と思って…」

「その根拠は?」

「いえ、あの、昨日も何もありませんでしたし、
部長なら私なんか相手にしなくてもいくら
でも喜んで寄ってくる方がたくさん
いらっしゃるでしょうから…」

そこまで言うと、突然、部長に左手を掴まれた。

立ち上がった部長が一歩踏み出すと、私は壁を背に逃げ場をなくした。

そのまま左手を引っ張られ、抱き寄せられた。

「いい加減、気付け。
お前は女だ。
何かあってからじゃ、遅いんだ。
このままじゃ、心配で目が離せない。」

無理矢理、抱きしめられてるはずなのに、部長の胸が、腕が、体温が心地よくて、抗えない。

ずっとこのままいてくれないかなぁ…

そんな事、考えちゃダメだよね?

部長、怒ってるのに、なんだか温もりが優しい気がする…

「ごめんなさい…」

部長の胸でそう囁いた。

部長は、腕を少し緩めると、
ふぅぅっ
と大きく息を吐いた。
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