艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

彼の方がずっと年上なのだから当たり前なのだが、何をひとつとっても余裕の表情なのが腹立たしい。
横目でじろりと睨んで言い返した。


「着物くらい、ひとりで脱ぐのも着るのもできます」


振袖はさすがに、ひとりで着るのは無理だけれど、脱ぐくらいは問題ない。
一歩寝室の中へ入ると、振り返って、葛城さんの目の前で無理矢理扉をバタンと閉めた。


そのまましばらく耳を澄ませる。
すると、彼が扉の前から離れていく足音がして、ほっと息を吐いた。



自分の服に着替え、着物は丁寧に畳んでたとう紙に包み、桐箱に入れる。
小物は、呉服店のロゴの入った紙袋があったのでそこにまとめておいた。髪もアップにされていたのを一度解くと、癖がついてしまっていたのでゴムでひとつに結びくるんとまるめておく。


深呼吸をひとつ、ふたつ繰り返した。
浅はかだっただろうか、と少し後悔をしている。

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