艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
ストローを咥えながら、携帯で時間を確認する。葛城さんが仕事を終えるまでは、まだかなり時間がありそうだ。


「……どうしようかなあ」


いくらなんでも、浮かれて早く来すぎてしまった。ぼんやりとフロアを眺めていると、社員証をぶら下げた人が何人もいる。


このジューススタンドもサロンも、当然一般の人だけじゃなく社員も使っているのだろう。


だとしたら、葛城さんも来たりするかな?
そう思うとここで時間をつぶすのも悪くない。


しばらくそうしてフロアを行き交う人を眺めていた時だった。携帯が短く着信音を鳴らす。


「……えっ」


葛城さんから、今夜の待ち合わせか仕事が終わる時間の連絡かと思ったのに。


メッセージアプリに出た名前は柳川さんだった。あの日、疑心暗鬼にとらわれた私はアプリのIDだけなら、柳川さんと連絡先を交換してしまっていた。


だが、私からはもちろん彼からも今まで何もなかったのに。

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