艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「賢明だね」


ふっと、彼は面白そうに笑う。
そうして、その手にあるバラの花束を私に差し出した。


バラの花言葉は、確か愛情だとかそんなだったろうか。


彼がそんな花言葉を気にしたとは思えないけれど、受け取った花束の薔薇は開き始めの、蕾のようなものばかりだった。


恐る恐る、それを受けとる。
覚悟を決めたとはいえ、これで私の将来が決まるのだ。


怖くないわけがない。


「綺麗ですね」


この花に遜色ない関係を、築けるだろうか。
バラの花から視線を上げて、葛城さんを見据えた。


私はこの人に信頼され、良き妻にならなければいけない、と同時に。
本当に花月庵を守ってくれるのかどうか、見極めなければならない。


大きな賭けだった。


彼が、手にしていた四角い小箱から、大きな青い石の指輪を取り出す。
それは、太陽の光を受けて眩しいほどに輝いた。


差し伸べられた手に、ゆっくりとみずからの手を重ねる。


その途端、ぎゅっと人差し指から薬指まで握りしめられ、どくんと心臓が跳ねた。

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