Voice -君の声だけが聴こえる-

「猪狩華絵は駅前のラーメン屋でのアルバイト帰りに被害に遭ったようだ。バイトには普段から徒歩で来ていたというバイト先の人間の証言が得られている。通報時刻は午後十時四十分頃。現場近くの家に住む大学生が第一発見者だ。道の真ん中で血を流して倒れていたためひき逃げに遭ったのではないかと思ったらしい。警察と救急隊員が駆け付けた時にはすでに息を引き取っていたそうだ」

 傑の話と紗友が今朝拾い伝えてくれた情報との間に大きな誤差はないようだ。一度美由紀の殺害現場へ足を運んでいた詠斗は、花屋に寄った際に確かラーメン屋の前を通ったな、と記憶を遡った。おそらく猪狩華絵がアルバイトをしていたというのはそのラーメン屋のことなのだろう。

 傑はノートを片手に話を続ける。

「頭部に大きな損傷が見られ、死因は外傷性ショック死と推定。頭の傷以外には目立った外傷はなかったためひき逃げの可能性は極めて低く、背後から何者かに殴打されたと見て捜査を進めている」

「背後から? 雨が降っていたのに?」

 傑の向かい側から、詠斗はすかさず疑問を投げかける。
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