借金取りに捕らわれて 2
長い髪は手櫛で一つにまとめ、メガネは同じく長い前髪に隠れている。


化粧っ気もなく、着ているグレーのスーツは既製品で、数年前に流行った型遅れのもの。


「うん、問題ない。」


ドアノブを回し、扉を開ける。


「おはようございます。」


一歩外に足を踏み出すと、右側から明るい声が掛けられた。


ドキリとしてそちらに視線を向ければ、濃紺デニムのスキニーパンツにグレーのパーカーと黒のロングジャケットを着て、スーツの時より若く見える昨日のお隣さんが笑顔で立っていた。



どうして会っちゃうの!?

出来るだけ関わらないようにしようと、決めた矢先に!

今までこの時間にあったことなかったですよね!?



正直、予測外のことに内心穏やかではない。


が、ここは挨拶を返さなければ…



「おはよう。」



声のトーンと笑顔に気を付けて、挨拶を返す。


笑顔と言っても目元は見えていないだろうから、口許に重点を置いた笑顔だ。



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