ハツコイ
「はい、どーぞ。」
ソファーの端っこに座る私の前に出されたコーヒー。
「ありがと…」
それを一口飲み、ホッと一息つく。
男の人の部屋ってこんな感じなんだ…。
部屋を見渡していると、琉偉が私の隣にどかっと座った。
「何見てんの?俺の部屋、おかしい?」
「おか…しくはないけど、男の人の部屋って、あんまり物がないんだなって…」
ちょ、近い近い!!
2人がけのソファーに隙間なく座っちゃってるこの状況!!
心臓のドキドキが伝わりそうで怖い。
「柚…いい匂いする。」
「へっ!?あ…だから、お風呂上がりだもん。」
ちょっと、何なのよー!!
心臓が張り裂けそう。
「ね、琉偉。話って?」
息もできない位ドキドキしてきたので、とにかく本題に入らせる。
「ああ、高校の時のタケル覚えてる?」
「うん。琉偉と仲良しだったもんね。」
「そのタケルが今度結婚するんだけど、相手が水樹って知ってた?」
「えっ、エリ!?そういえばこの前、エリに結婚することは報告されて、結婚式来てねって言われてたけど…相手は教えてくれなかったの。」
「そうなの?じゃ、バラしちゃまずかったのかな?」
タケルくんとエリは、高校時代の同級生。
私とエリが、そして琉偉とタケルくんが仲良しでいつも一緒にいて。
そのうち私と琉偉が付き合い始めたけど、それでもよく四人で一緒に遊んでた。
その時は、二人はお互いそういう対象に見てるわけでもなければ、付き合う感じでもなかったのに。
「びっくりした?」
「したぁ…」
そういえば、エリがやたらニヤニヤしてるとは思ったんだよね。
「もうすぐ招待状届くみたいだぞ。楽しみだな!」
「うん、楽しみ!!」
私たちがまだ続いてたら、あるいはもっと喜べたけど…
この琉偉との微妙な関係のまま、エリたちと再会するのも、これまた微妙だな。
ふうっとため息をつきながらコーヒーを飲みかけた時。
「柚ってさ…彼氏いるの?」
そう聞いてきた琉偉が、まっすぐこっちを見つめていた。