ハツコイ
涙目で俺を見上げる柚に、今すぐ抱きしめたい衝動に駆られる。




だけど、ちゃんとケジメをつけてからだ。





「こんなまどろっこしい関係、もうやめよう。柚、俺は…入学式の時から柚のことが好きだった。」





「…え?」




柚の目尻から、涙が一雫、零れた。




「可愛い子だなって思って。話してみたら優しくて明るくて…どんどん柚のこと、好きになってた。」




「る…い…」





「俺の好きな人って、柚のことだよ。じゃなきゃ、他人が告白してんの、邪魔しないよ。」




それに、あんなに嫉妬なんてしないよ。





そう思いながら、柚を見る。




すると、柚が涙を拭きながら呟いた。




「私も…ね、琉偉の優しさに惹かれて、琉偉の笑った笑顔に癒されて。……私も琉偉のこと、いつの間にか好きになってた。」




ドクンと、心臓が跳ね上がる。





誰もいない裏庭。




「…柚、俺と付き合ってくれる?」




そう言って一歩近づく俺に、真っ赤な顔で頷いてくれた柚。




「今日から柚は、俺だけのものだ。…誰にも告らせないから。」




そう言って、柚の肩に手を置き…






その綺麗な唇に、キスをした。





俺の恋が、実った瞬間だった。



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