秘密の約束。










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「………つき」

誰かが俺を呼んでいる。

「睦月ってば!!」

苺香の声が聞こえて、俺は起きた。

「こんなとこで寝ちゃだめだよ!あんたは幼稚園児かっ」

夢だったのか。
すごく懐かしい夢を見たな。

少し怒り気味の苺香は俺を叩く。

会えないと思ってたのに。

俺が遠藤さん家に引き取られてから

もう一度会った。

俺はもうその時は恋だって気づいてた。

だけどはなせなくて、「はじめまして」しか言えなかった。

苺香はあの時のことを覚えてなかったから。






「あれ?なんで泣いてんの?」

俺は寝ながら泣いていたらしい。

拭ってくれる苺香。
優しい苺香。
大好きな苺香。






苺香までも


あいつに奪われるとは思わなかった。



その時は。





「ありがとう」



俺は初めてその言葉を伝えたのかもしれない。
苺香はびっくりしてて

「気持ち悪っ」


と言った。
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