おもかげlover...〜最上級に最低な恋〜
一瞬誰だかわからなかった。



でも、
わかった瞬間溢れ出したのは熱い涙だった。



「かっ…髪の毛どうしたの?」



「誰かさんが髪の毛長い人タイプじゃないって言ったから切った」



佐藤くんの短い髪が風に揺れる。



痛みも弱さも洗い流してくれるかのように吹いてくる春の夜風は、切なさと甘さを幾度となくわたしに運んでくれる。



いつかの誰かじゃなくて…


-恋、そのもののおもかげ-


をわたしはいつでも探していたんだ。


「すっごく…似合ってるよ」


照れ笑いした佐藤くんは、わたしのすぐ目の前に立って話し始めた。



「とりあえずオレ、なんも返せてねぇし…あんな話聞いたからって、そんな簡単に忘れられないっしょ…
オレはあこちゃんが好きだ。
あんなに一生懸命に救急車呼んでくれて、必死に看病してくれて、その後もずっと付き添ってくれる優しい子をオレは手放したくない。
夢の世界の?王子様だっけ?に、なれるか判断してよ?」



涙が溢れ、次々とこぼれていく。
それを見た佐藤くんはわたしをぐっと抱き寄せて、強く抱きしめながら言った。



「そばにいて欲しい。
そばにいてもいいですか?」



佐藤くんの胸の中で何度も頷いた。


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