終幕の鎮魂歌
ACT3〜出発〜


タクミは旅に出る前、最後の懺悔をするために懺悔室にて祈っていた。


タクミ「…どうかお許しください」


タクミは祈りを終えると立ち上がり、懺悔室を出ようとした。
するとどこからか、


「ミ……、タクミ……!!」


と必死にタクミを呼ぶ声が聞こえてきた。


タクミ「っ誰だ!?」


必死に辺りを見回すが、誰もいない。
誰かの悪戯だったのだろうか、ため息を吐いて再度歩きだそうとしたその時、


タクミ「うわっ!?!?」


タクミの右手が突然大きく震えだし、大きく前に突き出された。
そのうち右腕全体が震えだし、黄色い光が掌に溜まっていく。


タクミ「(まずい、このままだと力が抑えられずに暴走する…!?)」


タクミは必死に右腕を押さえつけるが、震えと光は治まる事は無かった。
そしてついに光の大きさが限界に達し、目の前に大量の光と共に少女が飛び出してきた。


タクミ「ぇぇええァええ!!!、は、あっ?
チ、チナ……!?」


チナと呼ばれたその少女はタクミを見るとにぱっと笑った。


チナ「久しぶり、タクミ!!」


タクミ「え、ぇぇえええ…!?」


チナはタクミとリオが協会に来てから、2人のことを温かく迎えてくれた心優しい天使だ。


タクミ「(でもなんで今まで姿を消して、俺の記憶からも無くなってたんだ…?)」


不思議に思いチナに目をやるが、チナはキョトンと首を傾げるだけだった。


タクミ「まあ、いっか…」


チナ「それよりタクミ、あてはあるの?」


チナが羽を羽ばたかせながら質問する。


タクミ「多少はな」


チナ「でもほかの神父さん達には無理だったのに、タクミには出来るの?」


タクミ「俺が何のために書庫に篭ってたと思ってんだ。
それに、アイツらにはなくて俺にはあるものがある。
引き裂きたい程に腹立たしくて、最高の瞬間を俺にくれた、アイツのと絆がね…」


タクミが指先をナイフで切り裂き、地図に血を垂らすと、ぶわりと金色のコンパスが宙に現れた。
そのコンパスの針は、上を指している。


タクミ「よし、北だ」


タクミはチナを引き連れ、歩き出した。





道中腹が減り、昼食を食べ歩きしながら森の中を歩いているタクミとチナは、思い出話に花を咲かせていた。


タクミ「でも、なんでお前が俺の中から出てきたんだ?」


チナ「いやぁ〜、それがウチにもよく分からないんだよね〜…」


タクミ「分からないって自分の事だろ…。
確かお前が姿を現さなくなったのは10年前だよな?」


チナ「よく3人で書庫で遊んだもんね〜!」


タクミ「10年前って事は…」


タクミは何かを思い出そうとしたが、その時、地図が金色の光を放ち出した。


チナ「ん、どうしたのタクミ?」


タクミ「静かにしろ…」


タクミは地図を静かに指で辿っていく。


すると弾かれたように顔を上げた。


タクミ「協会かっ!?」


タクミはチナの手を引き、近くの教会へと走った。
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