アッファシナンテ

遼「おじさん。ハサミまだある?」

橋爪「ああ。切れるかどうか
分からんが...。」

遼「貸して。」

ホームレスからハサミを受け取り
花恋の横に座ると
投げ捨てたシャツを切り刻んだ。

よく分からないけれど
何だかものすごく気持ち良かった。
皆が好奇の目を向けている事には
気付いていたけどそれさえも
気持ち良くて...慌ただしく流れる
社会の波に反しているこの場所が
心地よかった。

寒さに震える俺の肩に
ホームレスが薄汚い上着をかける。

橋爪「昨日、拾ったものだ。
...寒いよりはマシだろ。」

遼「ああ、サンキュー。」

そのまま俺たちは無言で
服を切り続けた。
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