人魚のいた朝に

「もしもし、青一??」

そんな僕の耳に、大好きな彼女の声が飛び込んできた。
今の今まで感じていた緊張や焦りが、笑ってしまうほど簡単に解けていく。

「初空」

「んー?どうしたの?吃驚した」

「ああ、うん。なんか、声聴きたくなって」

何を話すかなんて、考えてもいなかった。

「何それ?青一、なんかあった??」

「うん。あった」

「何!?」

その声が、驚いたように跳ねたのが分かる。

「初空に会いたくなった」

「・・・へ?」

「あ、いや・・・会いたいのは、いつも会いたいんだけど」

「青一、何言っとるの??」

「今日は、一段と会いたい気分なんだ」

「・・・」

返事のない初空が、今何を思っているのかはわからない。
それが、急に不安に思えた。

「こんなにも初空に会いたいのに、会えないことがもどかしい」

「青一」

「あのさ、初空」

「うん」

「今度会ったら、伝えたいことがあるんだ」

「・・・何?」

「大事なこと」

もしもこんな不安を、初空も感じているのなら、早くそれを取り除いてあげたい。

「初空の顔を見て伝えたいから、なるべく近いうちに会いに行く」

頭の中でスケジュール帳を開きながら、帰れそうな日を探す。
日帰りでもいい。とにかく初空に会いに・・・

「青一の予定は信用出来へん」

「・・・え?」

「だから、うちが会いに行く」

「・・・」

今、初空が何かを言った。

「ちょっと、聞いとる??」

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