人魚のいた朝に

僕は彼女の、魔法使いになりたかった。
傷ついてしまったその足で、もう一度歩けるように。

「元気でね」

だけどその朝、僕らは別々の道を歩み始めた。

「初空」

「なに?」

「幸せになって」

長かった初恋は、涙と一緒にあの砂浜に消えてしまった。

「青一もね!」

だけど最後に見た彼女の笑顔を、忘れることはないだろう。

サヨナラを告げた君の手を、

離したのは僕だった。









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