諦めるには値しない

~昴side~


陶太の手を振り払った真山は
諦めたような笑みを浮かべた。

真山「人はそう簡単には変われん。
...その通りじゃな。」

陶太「真山くん?」

真山「父さんと母さんが死んでから
俺はずっと誰かの陰に身を潜めながら
ひっそりと生きようがいつ死のうが
どっちでもええと思っとった。
だから、俺は乱闘騒ぎには迷わず
参加したし両親を殺した奴や俺たちを
リンチした疑いのある奴を見つけては
片っ端からボコボコにしたんじゃ。
誰かの恨みを進んで買い
俺の命を奪ってくれる奴を探し続けた。
...本当は俺、死にたかったんじゃ。」

誰にも話した事のない本当の気持ち。
広島弁で話す幼い頃の真山がそこにはいた。

真山はそれほどまでに過去を恨み
憎み縛られ...生きてきたんだ。
強い奴だなと心の底から思った。

俺だったら、恨みに任せて人一人
殺してもおかしくはなかったのに。
刃物を持った奴の胸に自ら飛び込んで
その命をくれてやったのに。
真山はそんな愚かな事はしなかった。
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