花瓶─狂気の恋─
「あれ?真帆〜。何してんのそんなとこで?」
「え?いや....ちょっと別館で用事が...」
「別館で用事?んな事あるわけないでしょ?朝から私達の目を避けようとして来てんだろ?もしかして....別館でこっそり悠雅さんと会ってるとかじゃねぇよな?」
口調が冷たく、鋭くなった麻紀の問いに真帆は何も答えなかった。
モジモジとして目線を合わせず下を向いていた。その反応で悟ったのか、麻紀は鶴のスマホ探しの事は頭から外れ、怒りで満ちていった。
「なんとか言えよ!このブス!!」
麻紀が怒りの声をあげるのと同時に麻紀の右足の裏が真帆の腹に命中した。
身体をくの字に曲げ、口を広いたままよろよろと後ろへ下がっていく。
そこに麻紀は真帆の頬を後ろに押し倒すように平手打ちをした。パチンッと手のひらが肉に当たる音が響くと、真帆は壁に背中を預けてズルズルと尻を床へ付けた。
「どうなんだよ結局!私の教育が全然届いてないってことだよね?そういうことだよね?先輩に逆らってるってことだよね!!?」
「い、いや...そんな事じゃ」
「言い訳すんなブス!ぶっ殺すぞ!!?」
麻紀は真帆の顎を蹴りあげた。真帆は頭を上げ、個室トイレのドアに頭をぶつけると、両手で頭を抱えて小さく丸くなった。
「あはは....ダンゴムシみたいじゃ〜ん。でも麻紀〜、痣とか残るのは流石にやばくない〜?」