four seasons〜僕らの日々〜
「リクエスト?」

「えっと…『ロミオとジュリエット』って知ってる?」

「はい、知ってます」

敵対し合う家の男女が恋に落ちるが、最後には二人とも死んでしまう悲しい物語ーーー。

「その劇をしたいって先生は言ってたけど、そのままだと悲しすぎるしでも『ロミオとジュリエット』はしたいし…。じゃあハッピーエンドにすればいいんじゃない?って先生に言ったら、先生がじゃあハッピーエンドにしてって言って……」

「は、はあ……」

「椿ちゃん、ハッピーエンドにしてくれないかな?文才あたしよりあるし」

先輩がじっと見つめる。

考えるよりも先に言葉が出てきた。

「やります!やらせてください!」

先輩は安心したように微笑み、「本当にありがとう。楽しみにしてる」と言った。



椿は、家に帰ってからさっそく悲劇から喜劇に直す作業を始めた。

しかし思っていた以上に難しく、しばらく考えた後ごろりと横になる。

ふと、棚の上に置かれた家族写真に目を向けた。元気だった頃のお父さんと、日本に帰ってきたばかりのお母さんと、まだ中学生になったばかりの椿で撮った写真。
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