悪しき令嬢の名を冠する者
「恋愛小説?」

「この思いを持て余さずに済む方法を探してたんだ」

「成果のほどは?」

「惨敗だ」

「でしょうね」

「お前は恋をしたことがあるか?」

 真剣に問えば、彼の無表情が僅かに歪む。目元を緩め瞳を潤ませる様は見たことがない貌だった。

「ありますよ」
< 166 / 374 >

この作品をシェア

pagetop