悪しき令嬢の名を冠する者

第40輪*side レイニー*

 *

「さてと、それじゃあ話してもらうよ」

「ベルナールの信用は未だに勝ち取れていないのね。悲しいわ」

「そんなことないさ。皆の信用を勝ち得たからこそ俺は警戒してるんだよ」

「そう」

 彼の声に曖昧に笑み、薄暗い酒場を見渡す。貴族は二階で一夜を明かすらしい。〝汚い〟と溜息を零す面々に、ロビンの怒号が飛んだのは二時間ほど前の話だ。

 彼らが寝静まったのを見計らって私達は店に降りてきた。

 フィン、ヴィンス、ユアンがカウンターに座り、ロビンが忙しなくグラスを磨いている。ベルナールと私はテーブル席に座り、怪しい笑みを交わし合っていた。
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