溶けろよ、心
【隼人side】
帰宅した俺は、自分の部屋に一人でいた。
志賀に会うために、東京へ行った。
現実から目を背ける橘を放っておけなかったからだ。
だけど。
車に乗り込むときの志賀の目は、
「帰れ」
確かにそう言っていた。
橘には悪いことをしたな。
電車の中での橘は何かを思い詰めた表情で、一言も話さなかった。
志賀と一度、きちんと話がしたい。
俺はダメ元で志賀に電話をかけてみることにした。