溶けろよ、心

「それにしても、あいつムカつくなあ……」


さっきの、あいつとの電話を思い出していた。


『お前俺からの電話は出んのな』

『うるせえよ。お前真由に言ったのかよ』

『あーはいはい。まあいいや、真由に代わるね』


"真由"

町田は確かにそう言った。

真由を呼び捨てにするのは、俺と家族くらいだったのに。

めちゃくちゃムカつく。






『ちょちょちょ、ちょっと待って!』

『はーやくしろー』

『は、はい!どんとこい!』

町田から真由に電話が渡るとき、かすかに聞こえた会話。

なんだよ、真由も町田に心開いちゃってんのか。
ハキハキ喋れてる。


めちゃくちゃムカつく。






「ムカつくとか言いながら笑ってんじゃん、晴斗」

「あーほんとだー!」

メンバーがニヤニヤしながらからかってきた。

「うるせえって、こっち見んな!」


フードを被って寝たフリをすることにする。


やっぱりこのグループは、居心地がいい。


真由、見てろよ。
俺たち絶対トップアイドルになるから。

< 255 / 334 >

この作品をシェア

pagetop