溶けろよ、心


文房具屋で、私は筆箱を最後の3つまで絞って、悩んでいた。

町田くんのプレゼント選びは、さっきスポーツショップでもう済んだ。いいのが見つかった〜って喜んでいる町田くんはかわいかった。
弟さんに自慢げに渡すのだろう。その時の顔、見てみたいなあ、なんて思ってみたり。

「悩んでるね」

救世主町田くんが、悩める私のもとにやってきた。

「この3つには絞ったんだけど…。全部かわいいからなあ。ねえ、町田くんはどれが好き?」

そう言うと、町田くんはニヤっと笑う。
私が、どうしたの?と首を傾げると、

「いや、橘が見たことない顔してるから。妹ちゃん愛されてるなって思っただけ」

「みみ、見たことない顔ってどんな顔!?」

私は手で顔を覆った。

「……俺はこれかな」

私の言ったことは無視して、町田くんは小さく英語の文字が刺繍された筆箱を指さした。

「こ、これね。じゃあ、これにしようかな」

「うん。店の外にいるから」

決めた筆箱をレジへ持っていく。

私一体どんな顔してたの……。
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