龍使いの歌姫 ~神龍の章~
そんなゼイルも、人間と同じように恋愛に悩んでいる訳だ。

人間と明らかに違う所は、恋愛関係―つまりは時間をかけてお互いを知ることなく、即結婚みたいなものだが。

「お前の悩みは分かったが、ティアはまだ心が子供だから、求愛は難しいだろう。まず、親代わりが知らないくらいだ。あいつも、求愛を知ってるか怪しい」

『でも、ティアは他のメスの龍にも可愛がられてるけどなー……やっぱ無理かな』

どよーんと、先程のレインのように、暗いオーラを出して落ち込む。

「ねぇアル?ゼイルは何で落ち込んでるの?」

「………これは男の問題だから、お前は気にしなくていい。それより、どこかに向かってたんじゃないのか?」

アルに言われ、レインはそうだったと思い出す。

「長老様に歌をお聞かせするの!後、明後日のことで相談」

レインはそう言うと、アルとゼイルに手を振って祠へと走る。

「じゃあね!……ゼイル。あんまり悩みすぎないでね!私もティアも、勿論アルも!皆ゼイルの味方だからね!」

一度止まってからそう言うと、また祠へと走っていくレインを見送ると、隣からすすり泣きするゼイルの声が聞こえた。

『……おいら、あんないい母ちゃんや仲間もてて幸せ……グスッ……うぇ……』

「吐くな」

涙と一緒に嘔吐までしそうになったゼイルを、アルは生暖かい目で見ながら、一歩後ろへと下がった。


「~♪」

『うむ。いい声じゃ』

レインの歌を聞きながら、長老はくつろいでいた。

「~♪……ふぅ」

歌い終わると小さく息を吐く。

『ありがとう。お陰で気分が良い。……して、何か用があるようじゃが?』

長老に聞かれ、レインは姿勢を正す。

「明後日のことで、ご相談があります」

『ふむ』

「明後日で、私は十九才になります。そしたら、龍の谷の外へ出る許可を頂けないでしょうか?」
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