龍使いの歌姫 ~神龍の章~
「レイーン!!」

「わっ!」

アルと話していたレインは、横から飛び込んできた少女と共に地面に転がった。

「いててっ……?あなた……」

「出来た!出来たの!」

金色の髪に金色の瞳の、十五才だったレインと同じ歳くらいの少女が、レインの上でにこにこと笑っている。

「……ティア?」

「そうなの!ティアなの!」

姿は変わっても、その喋り方は変わらない。

「成功したんだ!凄いね!」

レインはティアの頭を撫でて笑う。すると、ティアも嬉しそうに笑った。

『ティアって、結構素質あるな。二時間で成功させる奴なんてそうそういないぞ。おいらでさえ、一週間ぐらい練習して出来るようになったのに』

それでも、一週間で変身できるようになれる龍も、そうそういない。

「ゼイルは龍のままなの?」

首を傾げるティアに、ゼイルは頷く。

『兄貴達やティアを背中に乗せてかなくちゃいけないからな。地上に降りたら、おいらも変身するけど』

「ゼイルの変身姿、見たいの!」

『おう!楽しみにしとけよ!』

ゼイルの言葉にティアは頷くと、レインを振り返る。

「そろそろ行くの?」

「うん。あまり遅くならない内に行こうか」


ゼイルの背中に全員乗ると、ゼイルは空へと舞い上がる。

「……アルは外に出てたんだよね?やっぱり何か変わってる?」

「あまり変わっていないな。ただ、竜の凶暴化か増えているらしい。原因は不明らしいが、予想はつく」

先を促すように、レインはアルを見る。

「竜に与える竜水。その源であるシジナ草の成分が効かなくなってきたんだ。ジジナ草は、何の役割を果たしているのかは知っているな?」

「……ジジナ草。龍殺し(りゅうごろし)という毒草の改良品種。主にジメジメした日の当たらない所で育ち、龍が口にすると痙攣を起こし、思考が停止する。与えられる量によっては、傀儡(かいらい)のように生きた人形にしてしまう」

レインは龍の谷に来てから、長老に教えられた。

ジジナ草の成分には、細胞を破壊してしまう作用があり、魔力を持つ龍には、猛毒となる。

本能的に、龍は生きようと自分で魔力の源を壊すため、竜は火を吹いたり、姿を変えることも出来なくなる。

一首の防衛本能、または生存本能と言うべきだろうか。

だが、量の加減を間違えると、簡単に龍を殺せてしまう。

「ジジナ草は、もうこの国には存在しない龍殺しの成分を採取し、改良を重ねて作り出したものだ。だが、改良品種が、そんなに沢山作り続けるのには限界がある。今では、ジジナ草を作るのは、かなり難しくなった」
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