オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
「綺麗な部屋ですね。こんな部屋に連れてこられたら、オチない女の子なんていないんじゃないですか?」
もう、部屋もオトすための道具として使っているんじゃないだろうか。
そんな意味で聞くと、前を歩く松浦さんが笑う。
「どうだろ。誰も連れてきたことないからなぁ」
「あ……そういえば、前もそんなようなこと言ってたけど、本当だったんですね」
『信用していない相手なんて普通部屋にはあげないでしょ』
いつだったか、そんなことを言っていたのを思い出す。
「さすがに誰彼構わず連れ込むほど考えなしじゃないよ。自分で言うのもアレだけど、あんなゲームみたいな恋愛してるのに部屋なんて教えたら、しょっちゅう修羅場だろうし」
「ああ……なるほど」と納得していると、ソファに座っているように言われる。
「寒くない? 床暖は入ってるけど、まだ寒いようならエアコンいれようか」
コート、スーツの順に脱いだ松浦さんが、それらをバサリとソファの背もたれに置きながら聞くから、首を振った。
「大丈夫です。あったかいです」
「じゃあ、適当にくつろいでて。今、飲み物持ってくるから」
松浦さんは、テレビの電源を入れてから、スーパーで買ったものを持ち、冷蔵庫を開ける。そして、要冷蔵のものをしまい終えると、電気ケトルでお湯を沸かし始める。
お湯が沸く間に、マグカップやティーパックなどを準備する動きはとても自然で、普段からキッチンに立っているというのは本当だったのか、と感心する。
一ヵ月間接しているうちに気付いたけれど、このひとは嘘をつかない。
だからだろうか。
女の子からしたら最低な恋愛しかしない松浦さんを、悪いひとではない、だなんて感じるときがあるのは。