オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき


なのに……なのに、どうして。

ギリッと奥歯を噛みしめている私に、加賀谷さんは少し笑う。

恐る恐る顔を上げると、自嘲するみたいな笑みが映った。

「……なんて。今さらだよな。悪い。忘れて」

買ってきた薬のお礼を言う加賀谷さんに、こくりと頷く。


加賀谷さんの気持ちが、本当はすごく嬉しいはずなのに。


『行くなよ』

松浦さんの表情や声が頭から消えないせいで、加賀谷さんになにも答えられなかった。












< 173 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop