オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき


だけど、松浦さん的にはそこはあまり触れてほしくない気がしたから、「そうなんですね」と何も気付かない振りをして返した。

この人はたぶん、建前とか外面しか他人に晒さないんじゃないだろうかと、ふと思う。
本音だとか、傷つけられたら困る部分は、内側にしまいこんでいるんじゃないだろうか。

……なんていうのは、知り合って間もない私の、ただの憶測でしかないけれど。

まぁでも、そんなのは誰でもそうか、とひとりで納得していると、缶コーヒーを何度か口に運んだあとで松浦さんが、ふっと笑った。

隣を見ると、顔は前に向けたまま、細めた目でこちらを見る松浦さんの姿があった。

「なんですか?」
「いや、友里ちゃんってやっぱり真面目だよなって思い直してただけ」

もう何度言われただろう。
自分を不真面目だと思ったことはないけれど、そこまで繰り返し真面目だと言われるほどでもない気がして、そのまま受け入れられずに眉を寄せた。

「松浦さんの周りにいるのは、そんなにルーズなひとばかりなんですか?」

だから私をそう思うんだろうと判断して聞くと、松浦さんは、「そういう意味じゃなくてさ」と、私を真面目だと思うに至った説明をしてくれる。


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