不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 夜のドレスに着替える最中に思わず呟いた。

「まさか、こんなに忙しくなるなんて。昼近くに起きて午餐でしょ、お茶の会でしょ、急いで部屋に戻ってお風呂に入って着替えをして、夜にまた動き回らないといけないなんて。すごくハード」

 夜は残業をしているのと同じ気分になる。ひたすら体力勝負だ。

 貴族が昼近くまで起きられないのは、社交的な付き合いが夜を中心に繰り広げられるからだと初めて知った。

 エルマたちも忙しい。

「頑張られていますよ、マユコ様。昨夜の夜会は、上々の首尾だったと聞いています。侍女たちは裏で情報を交換しますが、評判がよろしいです」

「お世辞よ。だって、わたしの言うことはどこかピントを外しているもの。ジリアンが傍にいてくれるからなんとかなるだけ」

 一つ決めたことがある。後ろへ下がらないということだ。

 ジリアンの婚約者という立場は、仮であっても、まゆこの彼に対するどうしようもない気持ちをそっと癒してくれる。

 常に傍にいてくれるだけで泣きたくなるほど嬉しい。
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