不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「――ジリアンは、あなたになにも話していないのね」

 言ってはいけなかったと気が付いたのは、言葉が出てしまってからだ。

 美しい眦がみるみる上がり、カーライルは激高した。両手を上げてくる。

 以前は人差し指だけで空気を押し出して銃弾のように飛ばしてきた。今度は指全部、つまりは全弾を打ち込むつもりだ。

「エルマっ」

 まゆこの前にいる。あまりにも危険だ。だから、無意識にも彼女は一歩出ようした。

 ルースの腕がまゆこの動きを止める。それと同時に、エルマが自分の袖をめくって魔法具の革バンドを露出した。

 カーライルは鼻で笑う。

 魔法陣が小さく描いてある赤いネイルの指がばっと伸びる。エルマの革バンドは引くだけで腕から外れ、別の形になった。長い棒だ。

 彼女はその中心を持って目にも留まらない速さで回した。

 幾つも発射された空気が凝った玉は、棒の回転で弾き飛ばされた。
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