誰からも愛されない

✛✛離れよう


暫くすると
忍は、彩心から離れていった。

何も語らず彩心の元を離れて行く
忍の後ろ姿を
彩心は、寂しげに見ていた。

気を取り直して
朝食の準備をする。
丁度出来上がった時に
忍が洋服を着て現れた。

「美味しそう。
   彩心、おはよう」
「忍さん、おはようございます。」 
と、挨拶を交わして朝食をとる

今までになく、静かな朝食だ。

朝食が終わり、
彩心が片付けをしていると
忍が
「彩心、出掛けようか?」
「うん。」
用意をしてから、
二人は車に乗り込み外出をした。

忍は、玄関を出るときから
彩心と手を繋ぎ、運転するときも
離さなかった。

どのくらい走ったのか・・・ 

ついたところは、広い駐車場で
忍は降り助手席の方に回り
助手席のドアを開けて
彩心を下ろし
手を繋いで歩き始めた。

少し歩くと
大きな滝が見え
雄大な滝と緑のきれいな風景に
彩心は、目を奪われていた。

すると・・・

「彩心、ごめんね。
辛い思いをしたね。
僕が頼りないばかりに
一人で抱えさせてしまって。
楓に帰国の連絡をすると
楓から聞いてる?
と、言われて
なに?どうしたの?
と、言うと
あの人は・・・
って、言いながら
話してくれたんだ。
 
調度、兄の会社も落ちついて······
帰国が決まっていたから
急遽、イブに帰国したの
また、清香が何か行動を起こすかと思って。」
忍は、黙って聞いている
彩心の方を向いた。

彩心は、悲しそうな忍の顔を見て・・・

「彩心は、僕から離れようと
思っていたんだね。

本当は、帰国をしたら
彩心にプロポーズをするつもり
だったのだけど・・・

彩心を守りきれなかった僕と。
僕の元を離れようと思っている彩心。


だから・・・・・


    彩心······離れよう······。」
と、言った。

彩心は、何も答えられずに涙がこぼれた。

忍は、彩心の涙を親指の腹で払いながら
「これは、彩心に渡します。
必要ないものなら
捨てて欲しい。」
と、四角い箱を差出した。

彩心は、首を横にふる。

そんな彩心の手に忍は、
その箱を持たせ
逆の手を引いてから
車に戻り彩心を乗せてから

「彩心、ごめん。
これ以上、一緒にいたら
離せなくなるから
・・・・・送るね‥‥」
と、言う忍の頬にも涙が
流れていた。
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