秘書課恋愛白書

そりゃ外部の人間が社長秘書だなんて、物珍しいのかもしれないけどこっちは社長命令という強制で仕事をしているんだから仕方ないじゃないか。


「はあぁぁぁ〜……」


思いっきり深い溜息をつく。

昨日から何回溜息を漏らしただろう。


それにしても、

あんな1日を過ごしてどんな顔して社長に会えばいいのだろうか…


思い出すと恥ずかしいからあんまり考えたくないけど、脳裏に焼き付いてわたしの頭から社長のことが離れない。


「こんなんで仕事続くかな…」


ぽつりと弱音が溢れた。

エレベーターを降りて社長室へと向かう。

いかんいかん、仕事モードに切り替えなくては。

冷静沈着な中原に戻るのよ、社長のペースに乗せられてたまるか!

両手でパンッと頬を軽く叩いて気合を入れたところでジャケットの裾を直して軽く深呼吸した。


「社長、中原です」

「どうぞ」

「失礼いたします」


コンコンと軽くノックをすると中から声がして足を踏み入れた。

よかった、今日は初日みたいなことにはなっていないみたい。

これ以上トラウマを植え付けられたらたまったもんじゃない。
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