君との時間
ー真愛ー
私は椎崎真愛。高2。

いつものようにちょっと皆より遅めに近道を通って学校に行く。
今日は1人の男子とすれ違った。
ー同じ学校だったけどあんな人いたかな。なぜか分からないけど懐かしい感じがした。
そんな事を思いながら学校に向かった。

教室に入るといつもの様に
「うわぁ、あいつまた来たよ」
「来なければいいのに」
「まじうざいわぁ」
私はいじめられている。
原因は私が掃除してた時クラスのリーダー的存在の彩って子に誤ってほうきが当たってしまったこと。
それからいじめが酷くなっていってる。

いつもの様に机をみると落書きだらけだ。
もう笑う事も泣く事も忘れてしまった。
無表情でそれを消す。

キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴り皆が席につく。
竹田先生が教室に入ってくる。
この先生は私がいじめられているのを知っていても見て見ぬふりをする。
直接的ないじめをしない人達はそうやって偽善者になる。
私を助けようとする人なんていない。

先生が喋った。
「おはようございます。今日は新しく仲間になる子を紹介する。入ってこい」
転校生…か…

ガラガラ…

「紹介する。西木星夜君だ」
「西木星夜です。よろしくお願いします」

あの人、朝すれ違った人だ。

「ねーめっちゃかっこよくない?」
「思った思った!」
「彩にぴったりじゃん」
「そんなことないよー」
いじめっ子のグループが盛り上がっている

「えーと西木の席はあっちな。椎崎の隣」
「はい」
私の隣か。
西木君の顔が驚いているように見えた。

「よろしくな。椎崎」
「…」

「えー星夜君かわいそ…」
「それなー」
そんな声が飛び交う。

「んじゃ朝の会終わるぞ」
「はーい」

終わったと同時に皆が西木君に寄って来た。
「ねーねーどこから来たの?」
「彼女とかいるの?」
「かっこいいね!モテるでしょ!」
皆が一斉に質問などを喋り出した。
西木君は困っているようだった。

まぁ、私には関係ない。
どうせこの人もただの傍観者になる。

今日のいじめはいつもより少ないな。
裏で何か言われたり物を取られたりするくらいだ。
今日は西木君が来たから皆私なんかにいじめをしないのか。
明日からはどうせいつもと同じだ。
西木君は気づいているのだろうか。

〜昼休み〜
「ねぇ、椎崎さん!今日空いてる?」
西木君が喋りかけてきた。なんで私なんかに。
私は無視する事にした。
「ねー椎崎さん?」
「おーい」
しつこく喋りかけてくる西木君に流石に私も喋るしかなかった。
「あ、空いてない。なんで私なんか…」
「ねー星夜君〜!そんな奴と喋ってないでさ〜うちらと喋ろうよ〜!」
彩が西木君に喋りかける。
「え、あ、うん」
西木君は困ったように頷いた。

「椎崎ってさ〜暗いよね〜!ね、西木君!」
わざと大きな声で言っている。
「そ、そうかな?そんな…」
「うちらと仲良くしようね!」
「え、うん…」
西木君もきっとそっち側にいくんだろうな。

*************************

誰も助けてくれない

皆見て見ぬふりをする

親でさえ信じてくれない

私の味方なんていない

*************************

〜放課後〜
いつもの様に1人で帰る。
早く家に帰りたい。
そんな事を思いながら帰っていると背後から誰かに肩を叩かれた。
「よっ!」
私は思わず驚いた。

振り返るとそこには西木君がいた。
私は無視して帰ることにした。
「お、おい!無視すんなよ」
西木君はまたしつこく近づいてくる。
「…何」
「一緒に帰ろう!」
この人は何を言ってるのだろう。
どうせ明日には私に関わらなくなるくせに。
「…なんで」
「1人で帰るよりさ一緒に帰った方がよくね?俺もこっち方向だしさ!」
「…わ、私が1人がいやって…言ったら?」
「それでも隣歩く!」
なんでそんなに近づいてくるの。
「…」
「決まりな!」
なんで勝手に…。
「…い…いやだ…」
「いいの!」
そんな風に言われ一緒に帰ることになってしまった。

「なぁなぁ、そういやさ、椎崎さんって名前なんていうの?」
急に名前を聞かれた。
「なんで」
「いいからいいから!教えてよ!」
「…真愛。真実の愛…って書いて真愛…」
皆この名前を気持ち悪いって言う。
私に合ってないって。
「いい名前じゃん!俺は星夜!星の夜って書いて星夜!」
「え」
正直驚いた。私の名前をいい名前と言ってくれたことに。
「なぁなぁ、真愛って呼んでい?」
なんで名前で呼びたがるの。
「なんで」
「俺が呼びたいから!」
「…」
「あ、椎崎も今日からは俺のことを名前で呼べ!」
「なんで」
「俺が呼んでほしいから!」
この人はすごく勝手だ。
「星夜…君…」
試しに呼んでみたら西木君はそっぽを向いた。
やっぱ嫌だったのかな。
「い、嫌でしょ…名前で呼ばれるの…」
「嫌じゃない…ちょっと…恥ずかしくなって…」
なんで恥ずかしくなんかなるんだろう。
そんな事を考えていると星夜君が喋った。
「なぁ、真愛ってさ小さい頃仲のいい男の子とかいた?」
なんでそんな事聞くんだろう。
「…いた。…名前も顔も…思い出せないけど…なんで?」
「え、いや、ただ聞いてみただけ!」
「そのストラップ…いいな」
星夜君が海の写真の入ったストラップを指さした。
「…あ…これはその子に貰ったの……別れる時にね…」
懐かしいな。元気かなぁ。
「そっか」
「じゃ…じゃあ、私こっちだから…」
「おぅ。じゃあな」
「……うん」
そうして私たちはわかれた。

ーやっぱり星夜君って懐かしい感じがするなぁ…なんでだろう…

家に帰り自分の部屋に行こうとするとお母さんが話しかけてきた。
「おかえり。学校どうだった?彩ちゃんたちと仲良くできてる?」
できてるわけない。
そんなに彩の事を信じてるんだ。
「うん…」
「ほらね。彩ちゃん評判良くていい子なのにいじめなんてするわけないじゃない。思い込みよ。」
お母さんは私のただの思い込みだと思っている。
「そ…そうだよね…」
「あんたも見習いなさい」
そんな事を言われて辛くなった。
でも、どうせ信じてもらえないと思い言い返すのも諦めていた。

〜次の日〜
今日は日直だからいつもよりか早めに学校に向かった。
学校に着いた頃はもう彩達によって机に落書きをされている。
星夜君がまだ来ていないことがわかりなぜかほっとした。

そして星夜君も来てみんなが星夜君と話していたらチャイムが鳴った。

キーンコーンカーンコーン

先生が話し出した。
「今日の日直は椎崎と加瀬部だが、加瀬部が来ていないので小林に加瀬部の代わりとして日直をしてもらう」
小林とは彩のことだ。あぁ最悪だなぁ。
「えーなんでですかー!椎崎さんだけでーいいじゃないですかー」
「だめだ。日直は2人って決まっている」
「まじ最悪〜」
こっちが嫌だと思っていると朝の会は終わった。

「椎崎さーん!黒板消したりとか色々準備したりするのちゃんとしといてねっ?」
やっぱり全部任してきた。
「う…うん…」
これのどこがいい子で評判が良いんだろう。

黒板を消していると西木君が近づいてきた。
「真愛、手伝おうか?」
そんな事したら私が恨まれる。
「いい」
「いいからいいから」
そんな優しくしないでほしい。
「星夜くーん!こっち手伝って〜?椎崎さんが重いものぜーんぶ任せてくるからー彩大変でさ〜」
彩が星夜くんにいい子のふりをしてる。
「え、でも小林が真愛に頼んでなかったか?」
「え!そんなことないよ〜!てか真愛って呼ばされてるの?椎崎さんにはー似合わないよねー」
「そんなこと…」
「お願い!これ持って!!」
彩は星夜君の手に運ぶ物をのせて上目遣いをした。
仕方なく星夜君は彩に手伝うことになった。
ーきっと星夜君に彩が私を悪くいうんだろうな。
そんな事を思っていた。

〜昼休み〜
トイレに言ったら外から彩たちの声が聴こえてきた。
「椎崎まじうざいわー」
「なんで椎崎なんかと日直なわけ〜」
「てかてか、椎崎さっきここのトイレ入っていったよ!」
バレてる。
「まじ?」
「椎崎〜トイレしてるのー?」
「椎崎ってさいつもくさいよねー流してあげるよー!」
なんでだろう。怖いって感情も出てこないや。
上から水がかかってきた。
「どー?綺麗になってくでしょー」
「あははっまじうけるー」
「流してもくさーい」
皆が笑っている。
もうトイレから出よう。
ガチャ
「うわ。出てきたし」
「逃げんなっ」
「せっかく洗ったんだしー、うちが髪切ってあげるよー!」
髪を切られる?そっか。
髪伸ばしてたんだけどなぁ。
チョキッチョキ…
「はーい出来た!」
「似合ってるーうけるわー」
「だっさっ笑」
前髪は斜めになっていて背中まであった髪が肩上になっている。
「てか星夜君に近づきすぎー」
「釣り合わねーよ。くさいから帰れよー」
「まじ目障りー」
そんな事を言いながらトイレから出ていった。
私はその後濡れた制服のままトイレから出てジャージとTシャツを取りに行き着替えた。

昼休みが終わり星夜君が話しかけてきた。
「真愛。なんでジャージ?」
「…制服が…汚れたから」
「そ、そっか。髪も短くなってるけど?」
やっぱおかしいよね。
「…自分で切ったら…こうなっただけだから…」
「本当に?」
「…うん」
そんな嘘をついてごまかした。
授業も終わり放課後、彩達に呼び出された。
「おい椎崎。何星夜君に媚び売ってんだよ」
そんなの売ってない。
「…売ってない」
バシッ
「は?嘘つくなや!お前じゃ釣り合わねぇつーの!自分の立場くらいわかれや」
叩かれたり蹴られたり。
痛くても自然と涙は出てこない。
本当に慣れちゃったみたい。
「もっと髪短くしてあげようか?」
「めっちゃ短くしよーよ!」
「いいねいいね」
そんな事になり後ちょっとで切られそうになった。
その時。
「おい。お前らやめろよ」
「せ、星夜君!ちがうの!これは!」
「何が違うって言うんだよ!」
「た…たとえ星夜君でも私にはむかったらどうなるか分かってるの?」
「やれるもんならやってみろよ」
星夜君がそう言った瞬間10人ほどがドアから見えた。
「皆が言ってたぞ。小林達が真愛をいじめてるって。俺は傍観者だったやつも許せない。でもこうやって俺に教えてくれた。俺はお前らが1番許せねぇ。」
「っ……もう…帰るわよ!いくよ」
「うん」
「う、うん」
彩達は走って帰っていった。
「おい、大丈夫か?真愛!」
「星夜君……あ、ありがとう…」
「椎崎さんごめんなさい」
「見て見ぬふりしてごめん」
「怖くて動けなかった…ごめん」
「ごめんね」
皆が謝ってくる。
「う…うん」
私は完全に許すことはできないかもしれない。
でも星夜君と一緒に動いてくれて嬉しかった。
久々だな。この感情。
「真愛…ごめんな…もっと早く気づいていれば…髪を切られることもなかったのにな…ごめん…ごめん」
星夜君が泣きながら謝ってくる。
それを見て目から涙がこぼれ落ちた。
「ううん…嬉しかった…誰も…助けてくれなかったのに……星夜君が…初めて…助けようとしてくれた…あり…がとう」
涙が止まらない。
「…真愛!…」
「…な…なに?」
「い…いや何でもない」
何を言おうとしたのかと気になったけど、それよりも嬉しさでいっぱいだった。
星夜君ありがとう

*************************

誰も助けようとしてくれない

そんな私を地獄の底から

引き上げてくれたのは君だった

君だけだったんだよ

本当に嬉しかった

ずっと涙なんて出なかったのに

涙が止まらなかった

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