嘘つきピエロは息をしていない

 *


「写真お願いします!」
「サイン下さい……!」 

 控室から出ると女子たちが待ち構えていた。

 どこに行っても俺はこういうのから逃れられない。

 それにうんざりしていた時期もあったけど、最近は――

「ポラロイド一枚五百円。直筆サイン付きでござる」

 カメラをかまえた忍者みたいなヤツがこうして俺をサポートしてくれている。

 売上は部費にされる。

 活動資金にあててもらえるなら俺はそれでいいと思ってる。

 あとで新見先輩が電卓を叩きながら大喜びしそうだ。

 事務所には事前に許可をとってあるから問題はない。

 俺の知名度もまだまだ上げたいところなのでこの写真がSNSで『演劇部の西条くん』として拡散してくれるとウィンウィンってわけ。

 実は社長は今回の舞台を大きく支援してくれた。

 二公演いずれも満員御礼なのは社長がお客を集めてくれたのが大きいし、チケットが爆売れしたおかげで衣装や舞台セットにお金がかけられた。

 音響などの設備もよくなったらしい。

 ほんとあの人には頭があがらない。

 その分働けって圧力も感じているが。働きますとも。

「払う払う!」
「二枚お願いします!!」

 しばらくしてようやく長かった女子の列が途切れたとき、信じられないことが起きた。
< 281 / 294 >

この作品をシェア

pagetop