だったら俺にすれば?~オレ様御曹司と契約結婚~

 ひとつひとつ、手探りのような形でしか、玲奈は人間関係を築けない。

 人からは慎重すぎると言われるが、そうではない。
 一度仲よくなった人間とは、長く付き合えるタイプだと思う。人間関係は大事にするし、幼い頃からの友人知人は今でも連絡をとって、しょっちゅう会っている。

 だから合コンという、短期決戦の場は、どちらかと言えば向いていないと思うのだが、玲奈は切羽詰まっていた。ああだこうだと贅沢を言える立場ではない。

「そういえばさー、玲奈ちゃんは南天(なんてん)百貨店で働いてるんだっけ? もしかしてあれ、受付嬢みたいなやつ? そそるよね~あの制服! 脱がせたいっ!」
「あ、ええっ?」

 突然、玲奈に話しかけてきたのは、正面に座っているおしゃれな黒ぶち眼鏡をかけた、パーマの男だった。

 自分で話題を出さねばとそのことばかり考えていたので、その瞬間、あれこれと考えていたことが、吹っ飛んでしまった。

(今、脱がせたいって、言った?)

 冗談だとわかっているが、一瞬冷や汗が出る。生まれてこの方、男性と一度も付き合ったことがないので、どう返していいのか、わからない。

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