あなたと私と嘘と愛
せっかくのデートなのに。こんなことで嫌な雰囲気にしたくない。
「…あ、すみません。大丈夫です。ちょっとだけ立ち眩みがして…」
「それは大変だ。どこか近くのお店に入って休みましょうか?」
ちょうどすぐそこに珈琲の美味しいカフェがあった。
私は大丈夫だと言ったが、彼はそんな私の言葉を遠慮だと思ったのか、「いいから」と少し強引にそこへ連れてった。
「…なんかスミマセン…」
「大丈夫ですよ。それより気分の方はどうですか?」
「さっきよりはだいぶましに…」
思わず嘘ついちゃった。
咄嗟の言い訳だったにしろ、こんな風に心配かけてしまって申し訳ない。
今になって反省。もっと気丈に振る舞わないと。
「本当にすみません」
「もう謝らないでください。僕は気にしてません。どんなかたちにしろ僕は今こうして月島さんといられることが嬉しいので」
「坂井さん…」
彼の優しさに目頭が熱くなる。
なんて優しい人なんだろう。
しかもこんな気遣いもできて、嫌な顔1つしない。
胸の中がほかほかと毛布に包まれた感覚になる。