銀光のbreath 【番外編 追加完了】
2-1
 洋秋と鈴奈さんが住んでるマンションは、駅を挟んで洋秋の事務所の反対方面にある。

 彼女も妊娠が分かったばかりで、まだ悪阻は無いらしい。仕事はいずれ辞めるから引継ぎを始めてるんだとか。
 あたしの会社は水曜定休で、隔週で週休二日になる。鈴奈さんも、シフト制の平日休みだから都合を合わせてお邪魔することにしたのだ。

「瑠衣ちゃん、いらっしゃーい!」

 はつらつとした笑顔で出迎えてくれた鈴奈さん。緩くウェーブがかった髪を一つに束ね、丈の長いニットにレギンスってラフな格好だ。

「こんにちわー鈴奈さん。ハイこれ、檸檬タルト!」 

 駅前のスイーツ店で買ってきた手土産を渡す。

「ありがとー! 上がって上がって?」

 
 2LDKの賃貸マンション。お店でも小物や雑貨をディスプレイするからか、ここの部屋は季節によって印象が毎回違う。可愛かったりデザインチックだったり。今はもうクリスマスチックな飾りモノがあちこちに。

 
「取りあえず。結婚と妊娠おめでとうございます」

 紅茶とタルトがリビングテーブルに置かれたところで、彼女と向かい合わせにカーペットの上でクッションを座布団に座ったあたしは。あらたまりお祝いを言った。・・・素直な気持ちで。

「なんかねー今更って気もするけど。ありがとね、瑠衣ちゃん」 

「洋秋が教えてくれないから由弦に聴いたんだよ?、あたし」

「照れ臭かったんじゃないの? 男ってそういうとこあるでしょ」

 クスクスと鈴奈さんが笑う。

「由弦クンもこないだ来てくれてね。瑠衣ちゃんが相変わらず強情だって、嘆いてた」

 あいつ他人の家で何をべらべら喋ってんのよ。ココロの中で拳を握る。

「・・・由弦はだって、なんかムカつくんだもん」

 あたしが苦そうに言うと。

「そう言うのって『幼馴染あるある』っぽい」

 タルトにフォークを入れながら悪戯っぽく返された。

「付き合い長すぎて素直になれない感じなの?」

「・・・・・・なのかなぁ」

 曖昧に濁した。
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