君のために、死んであげる
「遅いじゃないか、何してた」

「デーガにあったの」


私はシューを見た途端、シューの婚約者を思い出してしまう

「デーガ、出張してたんだね」

「そうなのか」

「うん」


私はとにかく悟られないよう口を動かすが、うまく話せない

シューが切り出す


「お前……好きな奴いんのか?」

「え?」


いきなり?

「な、なんで?」

「いいから、答えろ」


私、好きな奴いんのかな?

「どうだろ」

「なにか暇になったときに、頭に思い浮かぶ奴だ」



「わっかんないなぁ〜…あ、デーガとか?」

「デーガ?」


「んーでも、だいたい考えてんのは、そのデーガか元の世界のことか、シューくらい、かな」

「…………」


そんなの、いきなり言われてもわかんないんだけどなぁ

「俺、結婚するか死ぬか、どっちかなんだ」

「え?」


「婚約者と結婚しなければ、俺は処刑され
る」

「うん…………」



知ってたよ


「でも」

でも?


「好きな奴、いるんだよな、俺」


「え……?」



「そいつと結ばれんのなら、俺は死んでもいい」

は?
何言ってんの?


怒り、いや、悲しみが、哀しみが、こみ上げてきて

「シューっ………!」

「?」


シューは、突然の私の叫び声に驚き、私を見る

「シューが……自分が死んだら、その子と一緒に入れないじゃん!!」


なんでだろう


涙が、止まらない





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