月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
それどころか、異常な眠気が私を襲う。

「そろそろクレハも眠るといい。ジャラール様のお話と、俺の話に付き合ったんだ。疲れただろう。」

「いえ。返って興味深いお話を有難うございます。」

「そうか?」

ハーキムさんに一礼しながら、ゴツゴツした枕に頭を乗せ、体を横にする。

今日はなんだか、いろんな事を知った。


でも忘れよう。

どんな生い立ちであれ、ジャラールさんはジャラールさんなんだから。


「安心して寝ろ。何かあれば俺がお前を助ける。」

「なんかそれっぽい事、ジャラールさんにも言われました。」

「はははっ!」

ハーキムさんの笑い声をバックに、私は目を閉じた。


異国の国。

知らない人達。

ベッドもない。

お腹いっぱいのご飯もない。

なのに私の胸の中は、いっぱいだった。


明日も灼熱の太陽の下、あの二人とラクダの背に乗って、旅をしているのかしら。
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