月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「ジャラールさんの心は、いつまでもネシャートさんの物だって事?」

「……そう言う事だ。」


それからは、何も言えずにずっと砂漠の中を、ひたすら走るだけだった。

そう言えば、私って昔から彼女がいる人を、好きになっていたっけ。


でも大丈夫。

振られても悲しいのは、その時だけだったし。

立ち直りは早い方だもん。


「泣くな。」

後ろからハーキムさんが、そっと抱き締めてくれた。

「泣いて……なんか、い……ない………」

「うそつけ。現に泣いているではないか。」

そう言われて、鼻をすすってしまう私は、嘘つくのが下手な人間だと思う。


「ハーキムさんは、彼女いるの?」

「お前……」

「あっ、いや!別にハーキムさんに乗り換えようとか、そんなんじゃなくて!」

「当たり前だ。一体何を考えているのだ。」

「はあ。すみません。」


別にただ聞いただけなのに。

そして砂漠の中、私の意識は徐々に無くなっていった。
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