桜の花が咲くまでは
応援したいという気持ち

「……んー。よし」

何度も読み返して書き直した文面をから目を逸らさないまま、呟いて息をついた。

あと一回だけ読み直して今度こそ送信しよう。



美陽からメールを受け取って予備校の校舎を見つめ、講師らしき男性と話をした日から、7日がたっていた。

あれから私は、これまでの葛藤が何だったのか不思議になるくらい前向きな気持ちで大地と向き合う準備をしていた。

スマホの画面から視線をそらした机の上には、綺麗に見えるようラッピングした小さな包みが置いてある。

まずは応援したいという気持ちを形にしようと考え大学の勉強を若干おろそかにしつつお守りを作った。

お裁縫は高校1年の家庭科の授業以来だし、もともと手先が器用というわけでもないから、予想より時間がかかり、何枚かの布切れを無駄にしてしまった。

だけど、あとちょっとというところで糸が玉のように絡まり手に負えなくなった時も、
お守り袋の口が狭すぎてどうにもこうにもひっくりかえせなかった時も、
予定では内側に隠れるはずのガタガタの縫い目が端っこにちらりと顔をだした時も、不思議と妥協しようとは思わなかった。

何度でもやり直して完成させようと思えた。

そうすれば、大地の苦しさをほんのちょっとでも感じられるような気がして。

頑張る大地に持ってもらうお守りは、前向きでひたむきな気持ちからできていないといけない。

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